オーストラリア国籍を取得した理由:市民権と永住権の違いとは?

オーストラリアの国籍取得、市民権と永住権違い

今回のこの件に関しまして、実は書こうか、書くまいか、ちょっと悩んだんです。国籍のことに関して、ちょっとした見解の相違もあるかも知れず、またオーストラリアの法律や国民性、或いは日本の常識的な考え方から理解してもらえないと思うこともあって、躊躇していた部分がありました。

私は、約5年前にオーストラリア国籍を取得しました。

たまに誤解されている方もいらっしゃるんですが、たとえ外国籍の配偶者がいて、その人の国で暮らし、永住権を得ていても日本国籍になんら影響があるわけではありません。多分、ほとんどの日本人の方が永住権を取得して国籍は日本のままで生活していると思いますし、私も13年くらいはずっと日本国籍のまま、永住権を所持しているPR (permanent resident)として生活してきました。

その一つの理由に、日本は多重国籍を認めておらず、日本以外の外国籍を取得した場合には自動的に国籍が取り消される、あるは自主申請をすることが義務付けられているので、もしも、日本に帰ることがあった時はどうするか、と思い悩んでしまう、というのがあります。私も将来的に考えて日本に帰るつもりがないにしても、どうしても日本国籍を放棄するということを保留にしてきました。

しかし、実際には特に法的な強制力は無く、その外国籍の国から日本国に報告があるわけでもなく、日本国の領事館が調べるわけでもないので、まあ、黙っていれば平気という事実もありますし、多分、申請せずにオーストラリア国籍、あるいはその他の国の国籍を取っている多重国籍の方が多いのではないかと思います。

オーストラリアの永住権と市民権の違い

Photo from Liverpool City Council

では、永住権と市民権はどう違うのか。それによって、多分、その国の市民権を取ろうと決心する理由が違ってくると思いますが、大まかに言って、どの国も同じような方針をとっているはずです。

オーストラリアの永住権のメリット

  • 就職が自由で、ビザも関係なし
  • メディケアで基本的な医療費は無料
  • センターリンクという行政からの援助も貰える
  • オーストラリア人と同じ値段で就学できる
  • 永住権取得後10年で国民年金がもらえる
  • オーストラリア国内の不動産が買える

という感じです。そう、基本的には永住権さえあれば国民年金(Aged Pension)がもらえるし、オーストラリア国籍のある人達とそう変わりはないです。では、市民権はというと、

オーストラリアの市民権のメリット

  • オーストラリアのパスポートが取得できる
  • 選挙権がある
  • オーストラリアの大学の学費ローンが組める
  • 国家公務員になれる

と、ざっとこんな感じ。事実、大学の学費ローンは一定額の収入があるまで支払いが延期されるので、とっても便利な制度です。ですが、普通に暮らしている分には永住権で十分カバー出来ますから、特別な理由がない限り日本国籍を放棄してまで取得する必要はないとは思います。

では、なぜに私がオーストラリアの国籍を取ったのか?

 

オーストラリア国籍を取得した理由

海外旅行中に有事があった場合の対応

まあ、楽観的な方からしたら「そんなこと、普通に考えてあまりないと思うけど」というかも知れませんが、天災、人災、テロ、様々なことが地球上で起こっています。そして、そうした事態に巻き込まれた場合、永住権だけでは対応してもらえなかも知れないということがあります。

例えば、ウチの家族は旦那と息子二人はオーストラリアのパスポートを持っています。ですが、私だけは日本のパスポート。そして、何かあった時に離れ離れになったとしたら、オーストラリア大使館は私の永住権を優先してくれるかどうか・・・これが結構、不安になりました。

下手をすると私だけ帰れない・・・ということにもなりかねないと、これは可能性があることかも・・・。

選挙に参加したかった

私は今まで日本にいた時は2回しか選挙にはいきませんでした。それは、多分、たくさんの日本の皆さんが思っているように日本の政治に国民の意見が反映されていないからという理由で、ほとんど興味もなかったんです。また、なぜか私は日本にはずっと住まないだろうなという漠然とした勘のようなものもあって、とりあえず生活していた部分も正直言ってあります。

しかし、二人目が産まれた時点で、ああ、私はこの子達のためにもきちんと政治に参加する必要があるな、と思ったんです。その国によって、政治の体質が国民性によって違ってきますけど、オーストラリアは割りと国民が選挙に積極的に参加し、また政治に関してもそれが反映されることも多い国です。まあ、選挙に行かなければ罰金というペナルティーもあるお国なので、みんな結構真剣に参加しています。

オーストラリアでは多重国籍は当たり前

これが理由になるかどうかは、ちょっと疑問なんですが、基本的にオーストラリアは多重国籍や二重国籍を憲法では認めていて違法ではないため、18年間の在豪で私の感覚がちょっと変わってきたのではないかという気もしています。

事実、長いことオーストラリアに住んでいると度々、友人から私の市民権Citizenshipの事について尋ねられることがあり、以前は、日本の国籍を放棄しないといけないから・・・と言っていたら、毎回、驚かれることが多く、当然ながら「じゃあ、いつこっちの国籍をとるの?」というような質問になります。まあ、それは別に嫌だとか思うこともなく、私個人の問題だったし、旦那もまたあれこれという人でもなかったので、この市民権取得は私の独断でした事になります。

将来的に市民権取得の法律が変わる可能性

現政権である保守派はたまにバカが人種差別的なことを公言しちゃったりしていますが、移民や難民に対しての規制をかけてきています。ちょうど私が市民権を取った5年前はそういう風潮が強く、実際、2018年現在では永住権取得も厳しくなり、市民権の審査も面倒なものになって行きました。ですから、多分、ちょうどいい時期に申請をして市民権を取得した事になります。

そしてまた、オーストラリア国内にいても何かあって、私の永住権が取り消しになる可能性もあり、私は強制的に日本に送還されるということも無きにしも非ず・・・・なのではないか、というくらいファシズムがオーストラリア国内にもジワジワと広がりだしていることも理由と言えるかもしれません。

市民権を取得して変わったこと

市民権を取って、オーストラリア国籍を取得して公私ともにオーストラリア人になって変わったこと・・・。

特にないです。

が、パスポートが息子達と旦那と同じ青い色のパスポートになり、結構、ワクワクしてことでしょうか。考えていたよりも、すごくスッキリした感じがありました。

そして初めての選挙の時も、おおお、頑張れよ!と、私が支持する政党の候補の人とも会話をしたりとなんとなく他人事のようにしていた罪悪感、つまり、税金とかを使っておきながら大切な政治にも参加していないという矛盾から解放された感が結構あって、嬉しかったんです。

では、日本国籍を放棄するにあたって、自分の中の国民性はどう変わったのかというと、別にそんなに変わっていません。事実、日本には帰るつもりもないし、このオーストラリアで老後を過ごし、最後には海に散骨を希望しているし。しかし、私が過ごしてきた、私の中のコアな部分については何も変わらないわけですし、日本人としての愛国心も自分なりにあると思います。

ちなみに、多くのオーストラリア人は多重国籍が多いので、それに対しては特に特別感があるわけでもなく、オーストラリア国籍を取得していても「アイルランド人だから」とか「イギリス人だから」とか、「イタリア人だし」なんていうことを言う人が沢山いるので、私も「日本人だから」と言うことは引き続き言ってます。

ノーベル賞の中村氏の例による二重国籍の現状

多分、記憶に新しいところだと思うんですが、ノーベル賞を受賞した中村氏はアメリカ国籍のアメリカ人なのか日本人なのかと言う話題があって、記事によると、

中村氏の説明は『研究の予算を得る必要などから米国籍を取得したが日本国籍を捨てたわけではない』というもので、中村氏自身はまだ日本国籍を持っている認識のようです。

日本大使館の説明によると、中村氏は米国籍取得で日本国籍を喪失しており、これは中村氏の認識と異なります。

中村氏は国籍喪失届けを提出していないのでしょう。となると、中村氏は外国籍取得と国籍喪失届提出の間の段階に留まっており、戸籍は残存している状態です。パスポートも保持している可能性があります。つまり、二重国籍のグレーゾーンにいると考えられます。

いくら大使館が「外国籍取得で日本国籍を喪失」と主張しても、戸籍は残存しています。国籍喪失届の制度を知っていて、かつマメな人でなければ、戸籍が残りグレーゾーンにとどまります。

戸籍法では、国籍喪失から3ヶ月以内に提出が義務付けられていますが、これも外国籍取得を日本政府は知りようがないので、機能していません。

二重国籍の実態:「ノーベル賞中村氏は日本人」とする安倍首相、「日本国籍を喪失」とする日本大使館

上記のことは、他のネット検索でも出てきていて、私のように外国籍を取得した方、あるいはこれから外国籍を取得しようと思っている方にはとっても興味深いと思います。

では、外国籍を取得しても日本国に通知、あるいは申請しない場合はどうなのかと言うことについても、

国籍法に重国籍への罰則規定が無く国籍剥奪の強制執行制度も持っていないことも、後押しします。もしも重国籍を日本政府が知ったとしても、日本政府は「国籍喪失届を出すように」という説得以上のことはできず、国籍剥奪をする術はありません。

国籍喪失者が、国籍喪失により失効したはずの手元のパスポートを使うのは、旅券法により5年以下の懲役か300万円以下の罰金か両方の罰則があります。しかし、旅券法でも罰則のみで国籍を剥奪できず、戸籍が残っていれば日本政府は国籍喪失から判定する必要がありますが、この判定制度は存在しません。

これまで外国籍取得者がパスポートを使ったことで、旅券法違反で起訴されたことは確認されていません。つまり、「外国籍取得時点で日本国籍を喪失」という解釈への司法判断はおりていませんし、起訴しない当局もこの判断に触れることを避けているようです。

 

なるほど・・・と思う記事なんですが、

要するに、日本国では多重国籍や二重国籍につての処罰はないと言うことになっています。なので、実は日本大使館や領事館に申請せずに外国籍を取っているこの中村氏のような方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

国籍というアイデンティティ

国籍って、確かにアイデンティティの表れであるし、あなたは何人ですか?と聞かれた時に、国籍を聞かれたのか、血統を聞かれたのか、ちょっと戸惑うことがあります。ですから、オーストラリア国籍を取得した事で、私はオーストラリア人になったんですが、基本的には産まれたのは日本ですし、日本人として30年間過ごして来ましたから、そう簡単に、はい、あなたはオーストラリア人よ、と割り切る感覚はありません。それに、ここオーストラリアでは(加えて多重国籍を認めている国においても)、多重国籍である移民が沢山いるので、日本風な反応は少ないと言えます。

日本の超がつく愛国心溢れる方々がよくいうのが、非国民。この言い方って、英語にはあまりない言い方なんですねぇ、実際、オーストラリア人にとってはあまり理解できな価値観であると思います。日本語では非国民って言うと「日本人の癖に日本を冒涜している人、あるいはお上に逆らう人」という意味があって、あたかも日本国民であることが崇高のように扱っている感じがしますが、英語の非国民は、その文字通り、国民じゃない人、愛国心がない人、と言う感じに取られますが、ここまで民族性を前に出したニュアンスはありません、

ただ、当然のことながらこの民族主義思考は日本だけじゃないので、誤解があるといけないんですが、世界にも日本だけじゃなく多重国籍を認めていない、あるいはある一定の条件を課している国もたくさんありますし、こう言った愛国心を非常に持つ国民もたくさんいます。

しかし、グローバル化が進み、特にヨーロッパのようにEUによって国境が緩和された場合、国籍をもってのアイデンティティを示すのはかなり難しくなってきているのが現状ではないかとも思います。「イギリスに産まれたから、イギリス国籍だけど、親がフランス人だからその国籍もあるし、オーストラリアで結婚したのでオーストラリア国籍も取得したよ」なんていう人、結構、ゴロゴロいるんです。

ですから、国籍だけでその人のアイデンティティを推し量るのはちょっと無理が出てきているのもこのグローバル化の世界観ではないかと思います。また日本は少子化によって移民政策を取らないといけない状況にあり、すでに外国人の方も多くなってきていますから、将来的にこういうった価値観の変化を求められるようにあるんじゃないでしょうか??と、私は思います。